一般相対性理論での「曲がり」

一般相対性理論で時空が「曲がっている」というときの、曲がりという言葉は日常使う曲がりという言葉と、すこし性質が異なります。

 

数学に

・曲線、曲面の幾何学

多様体幾何学

という2つ分野があって、この2つで「曲がっている」という言葉の定義、性質が異なります。

 

曲面の幾何学の曲がりは、曲面をその外側から眺めて「曲がっている」と言います。この考え方は、ふつうの言葉遣いでの「曲がっている」と良く対応しています。

一方、一般相対性理論が使っている多様体幾何学は、別名アリンコの幾何学と呼ばれ、図形から外に出ずに、あくまで図形の内部に留まって、その図形が曲がっているかを考えます。

 

多様体幾何学での曲がりの定義は次の通り:

適当に一点をとり、そこに小さな矢印を乗せます。次に、その点からその点に戻る適当な輪をぐるっと描き、輪に沿って矢印を平行移動させます。一周して戻ってきたとき、最初の矢印と一周してきた矢印が重なれば「曲がってない」、2つの矢印がずれていれば「曲がっている」とします。

 

曲面の幾何学多様体幾何学と、どちらも曲がっている例は、球面です。

球面は、その外、つまり3次元空間から眺めて、丸く曲がっています。これは曲面の幾何学の意味での曲がりです。

次に、多様体の意味で曲がっているかというと、球面の赤道の一点に球面に沿うように上向き(北向き)の矢印を乗せます。これをAとします。Aを縦の経線に沿って北極点まで平行移動させBとします。Bの向きは水平で、AとBは3次元空間内では90度向きが異なっています。次にBを横向きに縦の経線に沿って赤道まで降ろしCとします。BとCは3次元空間内で平行です。最後にCを赤道に沿って出発点に戻します。戻ってきた矢印Dは赤道に沿った向きになっていて、最初のAと90度ずれています。

 

曲面の幾何学多様体幾何学で、曲がりが異なる例は、円筒です。

円筒は、曲面の幾何学では曲がっています。しかし、円筒はその軸に沿って切り開くと平らな帯になり、多様体幾何学では曲がっていません。円筒に乗っているアリンコには、自分のいる2次元の空間が3次元空間内で丸まった円筒なのか、平らな帯なのか、わかりません。

 

---

 

曲がった多様体において、矢印Aを輪に沿って一周させて矢印Dにした後、このDを輪に沿って逆方向に平行移動させて元の点に戻します。このDを戻した矢印をEとすると、AとEが一致するとき、ねじれが無い(捩率れいりつ=ゼロ)と言います。AとEが異なる向きになるとき、多様体にねじれがある、と言います。

 

多様体には多くの種類がありますが、代表的なのはユークリッド空間、リーマン空間、フィンズラー空間の3つです。(Finslerの英語読みに近い表記はフィンスラーですが、彼はドイツ系のスイス人なので、ここではドイツ語読みに近い表記にします。)

 

ユークリッド空間:曲率ゼロ、捩率ゼロ。

リーマン空間:曲率≠ゼロ、捩率ゼロ。

フィンズラー空間:曲率と捩率のどちらもゼロでない。