数学でいう多様体とは、小さなユークリッド空間をパッチワークのように貼り合わせたものです。そしてツギハギのつなぎ目は滑らかで、角張らないようにします。一方、物理では、小さなミンコフスキー空間をパッチワークのように張り合わせます。
ユークリッド空間とミンコフスキー空間には大きな違いがあるのですが、以下ではその違いを気にせず、イイカゲンに記述します。
多様体では、2点間の(距離÷座標差)の平方根を計量と言い、よく記号gで表します。
ユークリッド空間:gは場所と向きによらず、つねに1。
リーマン空間:gは場所により変化するが、向きにはよらない。
フィンズラー空間:gは場所と向きの両方に依存する。
数学では上記のことを
ユークリッド空間:gは定数でg=1。
リーマン空間:g=g(x)。gは座標のみの関数。3次元ならg=g(x,y,z)。
フィンズラー空間:g=g(x, dx)。gは座標とその微分の関数。
のように書きます。
ユークリッド空間では、棒の長さや時計の針の進む速さは、場所によらず同じです。
リーマン空間では、棒の長さや時計の針の進む速さは、場所によって変化します。ただし、棒の向きを変えても長さは変わりません。
フィンズラー空間では、棒の長さは場所で変わるだけでなく、同じ場所でも棒の向きで長さが変わります。時間については、双子のパラドックスという現象について、リーマン空間とフィンズラー空間とで違いがあります。
双子のパラドックスとは、双子の片方が宇宙旅行に出かけて地球に帰還したとき、2人の年齢がどうなるか、という話です。リーマン空間では2人の年齢は一致しますが、フィンズラー空間では一致しません。また、移動距離も2人で食い違います。
地球にとどまる方を弟、旅立つ方を兄と呼ぶことにすると、弟から見た兄の移動距離と、兄から見た弟と地球の移動距離が、リーマン空間では等しいのですが、フィンズラー空間では異なります。
地球近辺では一般相対性理論が良く成り立っています。つまり、時空はリーマン空間という図形と見なすことができて、曲がりはあるが、ねじれは観測されていない、と言えます。しかし地球から離れた遠い所まで、ねじれゼロなのか、は未確認です。一般相対性理論を使って宇宙の全体構造を議論できるのですが、宇宙全体のねじれがゼロなのか、を天体観測で確認するのは、難しい気がします。