最近出た「古典的な量子重力」の話がアメリカ物理学会のウェブで解説されています:
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Physics - Might There Be No Quantum Gravity After All? (aps.org)
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これを見て思ったことを書きます。
1.この試みは、重力子を量子化しようとしない、という考え方らしいです。
注目すべき点は、この新説が正しいかを実験で検証できる、という事です。
いままで弦理論が批判されてきたのは、その主張が実験で検証しにくい、という点にありました。
また、(主流のコペンハーゲン解釈に異を唱える)多世界解釈への批判も、実験では解釈の違いを検証不可能、という点にあります。
古典的な量子重力、という今回の試みを見て思うのは、弦理論や多世界解釈も、こんなふうに「実験で検証できる」というものを出してほしい、という要望です。
補足:
実験で検証できる試みである、という点の他に、印象深いのは、不可能定理(no-go theorem)の穴を突いている、という点です。「不可能であることを数学的に証明した」
と言われると、素人の私は「ヘヘーッ」とひれ伏してしまうんですが、どんな証明にも前提条件があるわけで、今回のこの話は、前提を崩せば不可能が可能になる、という例になっているようです。
2.物理の情報を入手するのに、YouTubeは魅力的で、いわゆる教育系YouTubeには目を見張るものがあるんですが、最新の動向となると、この米国物理学会誌のように文字情報になるのかなぁ、と思いました。
arXivはちょっと大量すぎるので、こんなふうな「学会誌の解説記事」は、素人にはありがたいです。
以前、ある工学系の学会誌が、金銭的な理由から、英文版は継続するが日本語版を廃止する、という事をやりました。しかし、この米国物理学会みたいに一般の人でも読めるような解説だったら、日本語での情報発信でも採算がとれるかも知れませんね。
3.最新情報を見るメリットは、いわゆる教科書にある定説が、いかに流動的なものか、が分かる点です。
また、教科書の説明とは別の、その人にとって判りやすい観点での理解ができる、という事が起こる場合もあります。