中世のヨーロッパで天動説というと、プトレマイオスの天動説を指すと思います。このプトレマイオスの天動説をキリスト教と強く結びつける誤解が、過去において一部の人に見られました。私も誤解していた人の一人です。
単純に「地球が世界の中心」という意味の天動説は、プトレマイオス以前にもあったと思います。その単純な天動説とプトレマイオスの天動説との違いは、後者には周転円というアイデアがある事だと思います。
周転円というのは・・・まず地球の周りに大きく円を描き、その大きい円の上を一定のスピードで進む点を考え、次に、その点を中心に小さい円を描き、この小さい円を「周転円」と呼びます。惑星はこの周転円の上を一定のスピードで動く、という説です。
キリスト教とあまり関係ない、という理由:
1)プトレマイオスが天動説を考えたのは、古代ローマ帝国がキリスト教を公認する前でした。だいたい、キリスト教の教祖であるイエスを処刑したのはローマ帝国です。
2)プトレマイオスの天動説は、エジプトやペルシャなどイスラム世界にも伝えられ、アラブ社会でも使われていました。
3)聖書に、単純な地球中心説(古くからある天動説)や周転円の事など、書かれていないと思います。
4)地動説を唱えたコペルニクスは、彼が63歳頃に、枢機卿(カトリックにおいて法王の次に偉い人達)のひとりから、お褒めの手紙をもらっています。
このとき、プトレマイオスの天動説は火星の動きを説明するための周転円の個数が6個、7個になっていたそうです。まるで、親亀の背中に子亀、孫亀とたくさん乗せるような、どう見てもわざとらしい惑星運動のモデルで、それに対してコペルニクス説は太陽の周りに円が1個だけという簡単さでした。
コペルニクスの地動説の本は、コペルニクスが70歳で亡くなる時と、彼の死後23年たった時の2回、印刷・出版されています。これら2回の出版にあたって、誰もキリスト教会から罰せられていないと思います。