厳密さを求めること(3)波動関数

波動関数

 

これは日本語のWikiに以前書き込みをして、今見てみるとそのままらしいので、自分の文章を以下に転記します。

 

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2つの波動関数の重ね合わせ(加算)が物理的に意味を持つので、波動関数は加算に関する数学である線形代数に従うと期待される。しかし、波動関数線形代数での次数を有限な自然数Nと仮定すると、正準交換関係と両立しない。したがって線形代数を使うことにこだわるならば、いわば「無限次元」の線形代数を使用しなければならない。

 

ノイマンユークリッド空間の無限次元版であるヒルベルト空間を用い、質点の量子力学での波動関数の数学的定義を作成した。しかし、同じ手法は多粒子の量子論、場の量子論では十分な成功を収めておらず、波動関数・量子場の数学的定式化は未解決の問題である。

 

波動関数の数学的定式化に関する試みの一つとして、ノイマンとは異なる数学的定義を用い、虚数を廃した実数だけの量子力学を建設する試みが複数行われている。ある試みでは、水素原子からの光の波長についてはシュレーディンガー方程式と同じ結果になるが、多粒子系については通常の量子力学と異なる結果になり、実験値との差が大きいため、複素数を使う通常の量子力学より優位であるとは言えない。 

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上記の感想は今も同じです。要するに

 

・物理学で、ふつうに足し算とかしている波動関数は、数学的定義が無い

 

ということで、物理では数学的な厳密さに目をつぶっています。

目をつぶる理由は

 

1)数学的厳密さの実現よりも、解決したい面白い問題が他にある

2)数学的厳密さを樹立しても、新発見があれば、理論を作り直す

 

ことかなと思います。これで良いとは思いますが

 

波動関数に数学的な定義が無い

・それをめぐって物理学者と数学者が協力して頑張っている

 

というようなことを、多くの教科書に脚注として載せて欲しい気がします。

 

もちろん、そうしたことが明記されている本もあると思います。たしか、数年前にイギリスの物理学者が刊行を始めた「数学者のための量子力学入門、全6巻」とかいうのがあって、1巻目の序文に「数学者から量子場の説明を求められる機会が多く、いちいち説明していると時間がとられるから、本を書くことにした」ということが書かれていた気がします。