質量の起源

特殊相対性理論では、同じ出来事を2人の慣性系(絶対的に正しい人達)が見るとき、2組のxyzt(場所と日時)の値をローレンツ変換で換算します。

 

ローレンツ変換では時間と長さを足し算・引き算します。そのとき秒とメートルは単位が違うので、単位の換算をします:

   x = t * c   (記号 * は掛け算です。バツだとエックスと紛らわしいので)

です。

この単位換算式で c は秒速30万キロメートルで、光子、重力子などの静止質量ゼロの素粒子が走る速さです。

   30万キロメートル = 1秒

と見なすという事です。しかし、これから「時間と空間は同等だ」というのは、ちょっと言い過ぎだと思います。

 

例えば

   140円 = 1ドル

という時、物を買う場面では確かに円とドルは等しい振る舞いをしますが、日米の景気動向が与える影響、とかいう場面では円とドルは異なる振る舞いをします。また、物理的にも別物で、千円札をどうひねっても1ドル紙幣にはなりません。

 

ドル円と同様に、と書くとイイカゲンですが、メートルと秒は別物だと思います。

多くの物理現象において、運動方程式レベルではメートルと秒は足し引きできますから、そういう状況で「メートルと秒は同等」と主張するのは間違ってないとも言えます。しかし、私(物理は趣味の素人です)は、なぜ足し引きできるのか不明、と主張したいです。

 

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x = t * c は、運動方程式において、x と t が同等の性質を示す、という事です。運動方程式が扱わない現象、例えば原子核の分裂という自然現象において x = t * c になっているか否か、というのは、核分裂という現象を実験で調べなければ結論が出せません。

 

x = t * c から出発してアインシュタインは E = m * c^2   (ここで c^2 = c * c) を導きましたが、彼は運動方程式を計算したのであって原子核の事は何も考慮していません。結果的には、核分裂においても x = t * c でした。特に、核分裂時に飛び去る光子(ガンマ線)やニュートリノなどが「どういうわけか」とても低エネルギーなので、

  ・分裂前の原子核の質量 * c^2

  ・分裂後の原子核(核分裂片)の質量 * c^2 + 核分裂片の運動エネルギー

の2つは、ほとんど等しくなっています。つまり、大雑把には

   核分裂で質量が減った分、エネルギーが出てくる

という形になっています。

しかしここでも、素人の私は、エネルギーと質量は異なる性質を持った別物と思います。

 

なお、特殊相対性理論原子核理論ではありません。核分裂について考えるときは、背表紙に『原子核物理』とか書いてある本を見ると良いと思います。

 

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ヒッグス粒子が質量の起源、という言い方があり、その話の出どころは次の通り:

 

素粒子運動方程式をいきなり作るのは難しい。しかし、素粒子ラグランジュアンというものは比較的作り易く、それを作って、ラグランジュアンから色々な理論値を計算結果として出して実験値と比較します。

 

ラグランジュアンからは理論値だけでなく、運動方程式を出すことができ、単純には、ラグランジュアンにおいて質量=0なら運動方程式でも質量=0、ラグランジュアンで質量≠0なら運動方程式でも質量≠0です。

 

ラグランジュアンを作るとき、電子やヒッグス粒子は質量ゼロとして作ります。ここで、ヒッグス粒子が持つある種のエネルギー(運動エネルギーではない、内部エネルギーです。ワインのボトルの底のような山の形をしています。)が、電子などに影響し、運動方程式では電子などがゼロでない静止質量を持つ粒子の形になります。

そこで、ヒッグス粒子のエネルギーが、電子などの質量の「起源」と言うわけです。

 

起源と言って良いとは思いますが、疑問もあります。

 

ヒッグス粒子が持つものと仮定している、そのエネルギーの起源は何なのか? 例えば、ホニャララ粒子のスピンが理由でヒッグス粒子がそのエネルギーを持つというとき、「電子などの質量の起源はホニャララ粒子のスピン」という話になるのか?

 

ラグランジュアンを作る時に、仮に質量1を持つような粒子を想定し、ヒッグスのおかげで運動方程式では質量2になる、という場合「質量の半分がヒッグス起源です」と言うのか?

 

・一般相対論は、宇宙の全体構造が慣性質量を決める、という理論です。すると、ヒッグス場の内部エネルギーの大きさや分布形を、宇宙の全体構造が決めている、という予想が出てきます。この予想(マッハ原理)を実験で確認する方法は?