重力の法則の形が、絶対主義と相対主義でどのように違うかを見てみます。
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地球上で自由落下するエレベーターを、地上で見ている人とエレベーターに乗っている人から見ると、以下のようになります。
地上で見ている人:
エレベーター中央では、ある加速度Aが真下に向かって鉛直に働いています。
エレベーターの天井では、地球から少し遠いのでAより小さな加速度が真下に向かって働きます。
エレベーターの床では、地球に近いのでAより大きな加速度が真下に向かって働きます。
エレベーターの右の壁の中央では、地球の中心に向かって、Aと同じ加速度が少し左下斜め向きに働きます。左の壁では、少し右に傾いた斜め下向きに加速度が働きます。
エレベーターに乗っている人:
エレベーターと一緒に落下している人には、加速度がマイナスAだけ差し引かれます。
エレベーターの中央では、差し引きゼロになり、無重力状態です。
エレベーターの天井では、マイナスAの引き算が引き過ぎになり、少し上向きの加速度になります。
エレベーターの床では、少し下向きに加速度が残ります。
エレベーターの壁では、鉛直方向の加速度がゼロ(縦方向には無重力)になり、横方向の加速度が残ります。左右前後の壁では、エレベーター中央に向かう水平方向の加速度になります。
エレベーター内では、縦方向に引き伸ばされ、横方向に圧縮されるような加速度になります。
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上記の2人の2通りの見え方に対して、絶対主義(ニュートン力学)と相対主義(一般相対性理論)は次のように考えます。
エレベーターの人は間違っている。エレベーター中央で無重力というのは、ありえない。万有引力が消えるという自然法則は無い。自然法則としては、地上で見ている正しい人の見え方だけを採用し、Aの加速度に対応した引力Fの計算式を「万有引力の法則」として定めます。それは
F = 重力発生源の強さ = (物体の質量) ÷ (距離の2乗)
で、これが万有引力の法則、ニュートンの重力理論の基礎方程式です。
2人の人に共通しているのは、エレベーターの場所により加速度が違っている、という事であり、その違い方「(各点での加速度)ー(加速度の平均値・中央値)」は、2人で同じ値になっている。この「平均値からのずれ」を計算する式を一般相対性理論における重力場の基礎方程式として定める。
この「平均値からのずれ」は、地球の海水面を上下させる(干潮・満潮を起こす)潮汐力に対応します。
ニュートン力学:重力の本質は、引力である。
一般相対性理論:重力の本質は、不均一な加速度(潮汐力)である。
ニュートン力学では、強い重力とは、強く引く力のことです。一方、一般相対性理論では、強い重力とは、強い潮汐力のことで、縦方向に強く引き伸ばし、横方向に強く圧縮する力です。
ここで、一般相対性理論の基礎方程式は、それを表現する数学によって数式の形が違うのですが、テンソル解析という数学を使うと以下のようになります。
各点での加速度=Rij
加速度の平均値=R(gij/2)
として
Rii - R(gij/2) = 重力発生源の強さ = エネルギーと運動量
が一般相対性理論の基礎方程式になります。
ここで、RijはR00~R33の16個の数字で、Rは16個のRijの和です。gijも16個の数字で、無重力の時はg00=-1, g11=g22=g33=1,他のgij=0なので、16個のgijの合計はー1+1+1+1=2になります。それでgijを2で割っているのですが、ちょっと、ここの説明はイイカゲンです。
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各点の値から平均値を差し引く、という計算操作のことを、数学ではラプラス演算子、ラプラシアンと呼びます。一般相対性理論の基礎方程式の左辺は、重力場に対するラプラス演算になっている、ということができます。
ラプラス演算は画像処理において「境界線を取り出す」操作として使われています。ネットで「ラプラシアン フィルター」とか「Laplacian filter」で検索すると
0 1 0
1 ー4 1
0 1 0
のような9個の数字が正方形に並んでいるのを見る事ができます。
上記の9個の数字の意味は、上下左右の4点の色を単純に足したものから、中央の1点の色の4倍を差し引いたものを、中央の点の新しい色とする、ということです。色が均一な場所では、新たな色はゼロ、つまり無色になります。色の変化がある場所(画像に写っている被写体の境界線)では変化分が色として残ります。結果として、ラプラシアン・フィルターで処理すると境界線が残るようになります。
この中央のー4というのが一般相対性理論での ーR(gij/2) に相当するものです。
ラプラシアン・フィルターを通した後の画像で、無色というのは重力理論でいうと無重力状態に対応します。境界線を見ている、というのは一般相対性理論で潮汐力を見ていることに対応します。